放課後等デイサービスは主に発達障害の子どもを預かる為の福祉サービスです。
「障害児の学童」と呼ばれています。
元々は児童デイサービスという形で障害児の支援を目的としてサービス提供されていました。
これが平成24年の法改正によって、就学児と未就学児に分けて支援を行う形になりました。
就学児を対象として療育やその他生活能力向上の為の発達支援を行っているのが放課後等デイサービスです。
この形での運営になってから、多くの民間企業が事業としてサービスを展開し始めて、全国で1万ヶ所以上に施設があります。
この放課後等デイサービスの運営を巡っては、報酬改定などの影響で運営が難しくなるケースもあり、今後の動きが注目されています。
施設によっては職員の給与が削減されたり、人員自体を減らさないといけない事態に陥ることも少なくないようです。
障害児にとっては学校や自宅以外に安心して過ごせる自分の居場所です。
しかし、ビジネスやその他の要素によってその実態は形を変える恐れもあるのが放課後等デイサービスです。
今回は現状での放課後等デイサービスを取り巻く実態を様々な調査結果から紐解いて解説します。
放課後等デイサービスの施設の運営実態
放課後等デイサービスが現在の形で運営されるようになったのは平成24年からです。
それまでは「児童デイサービス」という名称でサービス提供されていた福祉サービスです。
ただ、それまでの運用方法だと法律上、支援できる障害児の限られてしまっていたことから法改正が実施されました。
未就学児 → 児童発達支援
就学児 → 放課後等デイサービス
という形で年齢による区分けがされたのです。
このタイミングで多くの民間企業が障害者福祉ビジネスに参入することになりました。
今では全国に1万ヶ所以上の放課後等デイサービスが存在します。
それと同時に、施設の利用者も17万人以上になりました。
利便性の高い福祉サービスの提供者が増えて、それに比例する形でサービスを受けられる利用者の数も増えていることになります。
しかし、その一方ではずさんな運営を行う事業者が出てきたことも事実です。
・障害の軽い子供ばかりを集めて十分な支援をせず、テレビを見せるだけ
といったような、発達支援や療育というところからかけ離れた運営をする事業者が増え出したのです。
つまり、放課後等デイサービスが提供出来る支援内容の質が低下してきたということになります。
そこで福祉サービスとしての質をどう担保していくかという課題が発生し、事業所に支払われる報酬の基準が改定されたのです。
平成30年に行われた報酬改定の影響
平成30年(2018年)に行われた報酬改定は各事業所に質を担保するのが目的です。
重度の障害児を受け入れた場合には、高い報酬を受け取るという仕組みが取り入れられました。
1.利用申請があった子供が持つ障害の程度を保護者に聞き取り
2.ヒアリング内容を元に点数化
3.重度の子供が半数以上いる事業所は「区分1」、半数未満の事業所は「区分2」と定義
このように事業所によって区分分けを行ったのです。
基本の報酬額は区分1で3-4%減、区分2では10-12%減という状態になりました。
実態調査から分かる業界の現状
障害のある子どもの放課後保障全国連絡会(全国放課後連)が行った調査から、
・49%の事業所 → 人件費削減
・36%の事業所 → 人員削減
という対策を取らざるを得なくなりました。
それ以外にも、
・32.9%の事業所 → 活動内容を見直す予定
という回答をしていて、運営する企業側からすればかなり厳しい状態になったのです。
さらに、この報酬改定を受けて廃止の危機にある施設の数は全体の2割程もあるのが現状であることが分かりました。
施設側では少しでも障害児の居場所を確保して、安心して生活し、自立できる場所を確保しようとしています。
しかしその裏側ではこういったビジネス上の「経営問題」にも発展してしまっているのです。
全国放課後連による実態調査の結果はこちらから閲覧できます。
→ 全国放課後連HP
→ 2018 年度報酬改定における報酬区分による事業所運営への影響
障害児や保護者、職員への影響
こういった背景と実態がある為、当然のことながら利用している児童や保護者にも影響が出てきます。
企業経営の問題が発生する為、先ほどの実態調査からも分かる通り施設で働く職員に対しては影響が出てきます。
施設の人員削減、給与カットの影響が出てきます。
そうなると、施設運営の質が落ちてしまうことが懸念される為、利用している児童の療育や発達支援が十分に提供できない恐れがあります。
土日や祝日の営業を行っていた施設が営業できなくなってしまう場合には、保護者の負担も増えてしまうかもしれません。
これらの影響が想定されることから、この報酬改定は実態を無視した制度になってしまう」という懸念がなされています。
今後の放課後等デイサービス
これまで解説した状況を考えると、報酬改定がこの状態を引き起こしているように見えます。
しかしながら、今後の放課後等デイサービスの質の担保を考えた場合には、施設側もより運営体制と児童の療育に対して考えなければいけないということです。
さらに、一部では発達障害を持った子どもの障害の重さを判定する段階でも自治体が正確にヒアリング出来ていないこともあるようです。
これらが改善されなければ企業経営ばかりでなく、利用する障害児の居場所が無くなってしまうという恐れもあります。
この記事へのコメントはありません。